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流れないそうめん

「回らない寿司」という表現に、出会う度に心惹かれる
食べものとしての寿司が好きとか嫌いとかではなく
言葉としての「回らない寿司」に不思議な魅力がある、というお話





「回転寿司」は「寿司」と区別するために「回転」と付けられた
当初は「回転寿司」のみが回転する特別な寿司だったのであり
「寿司」という表現だけで「回らない寿司」を意味していた
「回らない」という修飾は不要であった


時代は下り、回転寿司の隆盛によって寿司は回ることが一般的となった
「寿司」は「回る寿司」と「回らない寿司」を包括する語となり
「回る寿司」に対して「回らない寿司」と
「回らない」を記す必要が生まれた


短い期間に寿司の勢力図は変化し、その変化はまだ終わりを告げていない
現在、「回らない」は不要であるようにも感じるし、必要であるようにも感じる
だから「回らない寿司」と聞くときには、相反する2つの心情が同時に呼びさまされる


また、「回らない寿司」には「(回る)手頃な寿司」と「(回らない)高級な寿司」という対比の意もあった
ところが今では高級回転寿司が登場している。いよいよ寿司界は騒然としていることだろう
「回らない寿司」の正体が、謎に包まれていく





渾沌がある
渾沌は解明を拒む
ゆえに、不思議な魅力が生まれる


人々は「回らない寿司」と言う
人々は「流れないそうめん」とは言わない


そうめんは、秩序の世界に居るのだ
寿司は、渾沌の世界に居るのだ